■目次
事の発端
先日こんなニュースが飛び込んできました。
BBC米経済団体、「株主第一」を廃止 福利厚生や地域に注力へ
Business Roundtable(一次ソース):Business Roundtable Redefines the Purpose of a Corporation to Promote ‘An Economy That Serves All Americans’
- ビジネスラウンドテーブルとは米主要企業の経営者団体
- これまでの株主第一主義を見直し、従業員や地域社会への貢献を優先すると発表
- JPモルガン・Amazon・Apple等をはじめ米国の名だたる企業の180人以上の経営者が署名
- 3Mやジョンソン&ジョンソン等の連続増配銘柄企業も含まれる
- 50年近い歴史を持つビジネス・ラウンドテーブルが、株主利益を最優先としなかったのは今回が初めて
なぜ株主還元が最優先にされなかったのか
所得格差の拡大による大企業への批判
米国では所得格差の拡大で、大企業にも批判の矛先が向かっており、行動原則の修正を迫られた
出典:日本経済新聞米経済界「株主第一主義」見直し 従業員配慮を宣言
特に近年の自社株買いは問題視されてきた
出典:Schroders 投資環境レポート:自社株買いを懸念すべき6つの理由
自社株買いの動きは近年多くの企業でみられており、投資環境を根本的に変化させているほか、長期的な影響も伴うと考えられます。自社株買いを通じて株主還元を積極化することは、設備投資や研究開発などに資金が充てられず、結果として企業の長期的な成長が抑制されるという可能性もあることから、投資家は注意を払う必要があります。
トランプ減税により自社株買いが過去最高になり、巨額のストックオプションを得るために借金してでも自社株買いを実行したりと過剰とも言える状況はたしかにありました。
それでも米国増配株への投資は変えない理由
このニュースを最初見た時には、正直米国株オワタorzと思いました。連続増配株への投資は、ぶっちゃけイージーゲームすぎて、ついにバレたか、という印象でした。
でもいろいろ調べていくに’あたり、やっぱり投資方針は変更しなくて大丈夫という結論に至りました。その理由をまとめます。
理由①あくまで「優先度」が下がっただけ
これ、メディアの記事タイトルがよくないですよね...あくまで優先度が下がっただけで、長期の株主還元は行う事がきっちり書かれています。
Generating long-term value for shareholders, who provide the capital that allows companies to invest, grow and innovate.
企業が投資し、成長し、革新するのは株主あってのこと。株主に対して長期的な価値提供を行う。
(出典)Business Roundtable(1次ソース):Business Roundtable Redefines the Purpose of a Corporation to Promote ‘An Economy That Serves All Americans’
理由②法規制ではないし、むしろ批判をかわせる
ビル・クリントン政権で財務長官を務めたラリー・サマーズ氏は、企業に運営方針を変えさせる法的要件はないと指摘した。
例えばこれが自社株買いや配当に対する課税や制限等となれば話は変わってきますが、そのような類のものではありません。加えてこれはむしろ、大企業批判をうまくかわし、必要な税金や規制の改革を遅らせる戦略の一部という見方もあるようです。
理由③そもそも全ての企業が株主第一ではない
例えばジョンソン&ジョンソンは有名な我が信条というクレドにて、あくまで4番目に株主還元を置いてます。
第1に顧客、第2に社員、第3に社会コミュニティ、そして最後の責任として株主と優先順位付けをしています。
④長期的にプラスに働く
ではジョンソン&ジョンソンのような株主還元でも超一流の会社が従業員や社会への責任の優先度が高いのでしょうか。それはこの優先順位こそが中長期的な競争力を生み出し、利益につながり、最後に株主還元につながる事を知っているから。
顧客や従業員、取引先、地域社会、株主といった全ての利害関係者の利益に配慮し、長期的な企業価値向上に取り組む
ミレニアル世代の6割が「会社の主な目的を利益追求より社会貢献と考えている」と指摘。経営者に対して社会問題の解決に取り組むよう求めていた
私もミレニアル世代の1人として、これはとても共感します。今後を支えていくのは、まさに我々の世代。ちなみにその価値観は、こちらの本にうまくまとめられているのでオススメです。
ダイヤモンド社
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⑤米国企業のグローバル競争力と株主還元は圧倒的
米国は行き過ぎた株主重視の結果、揺り戻しが起きているのに対し、日本は過度な株主軽視が、企業の競争力低下を招いた。
仮に多少米国の株主還元が減ったとしても、グローバルに稼ぐ力、株主還元の積極性は米国は圧倒的です。日本企業は、稼ぐ力も弱く、株主還元が弱く、さらに従業員還元はもっと弱い日本株のウェイトを高める理由は現時点ではありません。
まとめ
- 米国連続増配株のインカムゲイン投資家は気にしなくてよい
- 法規制はなく、むしろ批判をうまくかわしている見方もできる
- そもそもJNJ等、株主への還元は優先度の最後としている
- むしろ従業員や地域社会への貢献により長期的には競争力はさらに強くなる
- あくまで優先度が下がっただけで、米国企業の株主還元は圧倒的
- 株主軽視、従業員も軽視の日本企業に切り替える理由はどこにもない
今後個別企業の動向はチェックしつつ、動じることなく投資を続けていきます!